血漿分画製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血漿分画製剤のいろいろ

免疫グロブリン製剤

免疫グロブリン製剤の適応

自己免疫疾患〔じこめんえきしっかん〕

特発性血小板減少性紫斑病 〔ITP、とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう〕

血小板は、血管が傷ついた時、そこに集ってきて傷口を塞ぎ、出血をくいとめる働きをしています。

ところが何らかの原因で、自分の血小板に結合してこれを壊してしまうタンパク質(「自己抗体」)が出来て、血小板の数が少なくなり、出血し易くなる病気があります。これがITPです。

ITPは通常ステロイド剤で治療されますが、①ステロイド剤が使用できない患者さん、②手術や出産などで緊急に血小板の数を増やしたい患者さん、③血小板が著しく少ない小児の患者さんなどには免疫グロブリン製剤が使用されます。ITPの患者さんに免疫グロブリン製剤を大量に投与することで、血小板が増加し止血しやすくすることができます。しかし免疫グロブリン製剤による血小板増加は一時的で、投与7日前後にピークとなり、その後、徐々に減っていって1ヵ月以内に投与前値に戻ります。そのため緊急治療が必要な場合、例えば、重篤で生命を脅かす出血時や手術前、分娩前等に使用されています。

(詳細は、「自己免疫疾患」参照)

<北九州八幡東病院院長 白幡 聡先生 監修>

川崎病〔かわさきびょう〕

川崎病は主に4歳以下の小さな子どもに起こる、高熱や発疹・いちご舌などの6つの特徴的な症状を伴う急性の疾患です。通常は一過性で回復しますが、一部の子どもには心臓の血管に後遺症を残すことがあり、稀に心筋梗塞による突然死もあります。

治療には、アスピリンや免疫グロブリン製剤が使用されます。川崎病に免疫グロブリン製剤を大量投与することで、早期の解熱と冠動脈障害が著しく減少することが臨床で確認されており、最近は川崎病のほとんどの症例に免疫グロブリン製剤が使用されています。

(詳細は、「自己免疫疾患」 「第3回勉強会」参照)

<日本川崎病研究センター理事長 川崎 富作先生 監修>

慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー
〔CIDP、まんせいえんしょうせいだつずいせいたはつにゅーろぱちー〕

CIDPは発症から2ヶ月以上にわたって進行する多発神経炎で、ゆっくりと進行するタイプ(慢性進行型)と再発・寛解を繰り返すタイプ(再発寛解型)があります。症状としては手足の脱力や筋力低下が左右対称性に出現し、このため足に力が入らなく、転びやすくなったり、手の脱力のため物をうまくつかめなくなったりします。また、感覚障害により手足のしびれ、ピリピリする痛みなどを認めることもあります。CIDPの原因は現在もなお不明ですが、自己の末梢神経に対する免疫異常がその原因ではないかと考えられています。患者数は人口10万にあたり0.3~0.5人で、現在は特定疾患に指定されています。

CIDPの治療は、①免疫グロブリン静注療法(IVIG)、②血漿交換療法(PE)、③副腎皮質ステロイド薬療法、④免疫抑制剤療法などがあります。①、②、③の治療の有効性はいずれも60~70%です。④免疫抑制剤療法は①~③で明らかな改善を認めない症例において用いられる治療法です。最近では、IVIGが第一選択の治療法として用いられます。IVIG治療により四肢の脱力は比較的早期に改善しますが、再発することがあり、このような場合ではIVIGを繰り返し行うこともあります。

(詳細は、「自己免疫疾患」参照)

<埼玉医科大学教授 野村 恭一先生 監修>

ギラン・バレー症候群〔GBS〕

GBSは、ウイルスや細菌感染などを契機に、自己の末梢神経に対する抗体(自己抗体)や自己の神経を傷害する細胞が生じ、これらにより自己の運動(ときに感覚)神経が障害される急性の末梢神経の病気です。病気の初期には足の筋力低下により転びやすいなどの症状を

認め、次第に上半身にも運動麻痺が進行し、手の脱力も出現します。また、時に脳神経も障害され、物が二重に見える、顔面筋の麻痺、飲み込みが障害されることもあります。通常は、発症後4週間ほどからゆっくりと回復しますが、重症な症例では呼吸筋も障害され、手足の筋肉の萎縮を認め、起立・歩行障害などの後遺症を残す場合もあります。また、3~5%の症例では不整脈、呼吸不全により死亡することもあります。患者数は本邦では人口10万にあたり1.15人で、うち重症例は約20%です。

GBSの治療は、血漿交換療法(PE)、免疫グロブリン静注療法(IVIG)などがあります。副腎皮質ステロイド薬療法は従来用いられましたが、現在は単独療法としては行われません。GBSと診断すれば、できるだけ早期からPEあるいはIVIGによる治療を行います。

(詳細は、「自己免疫疾患」参照)

<埼玉医科大学教授 野村 恭一先生 監修>

⑤ 天疱瘡〔てんぽうそう〕

2008年10月、厚生労働省から静注用免疫グロブリンの1製剤に天疱瘡が新たな効能として承認されました。

天疱瘡とは皮膚の表皮細胞同士、あるいは粘膜の上皮細胞同士の結合が解けて、バラバラに離れ、できた細胞間の隙間に組織液が貯留し、水疱がたくさん現れる病気です。全身の水疱で重いやけどをしたようになり、皮膚の表面から大量の水分が失われたり、感染を起こしたりすることもあります。また、口腔粘膜にびらんが広範囲に生じて、痛みを伴い、食事がとれなくなることがあります。厚生労働省研究班の調査によれば、日本全国に3,500~4,000人の患者さんがいると推定され、発症年齢は40~60歳代に多く、また性別ではやや女性に多い傾向があります。

天疱瘡の一般的な治療としては、ステロイド剤の大量内服治療が行われますが、この治療に十分反応しない場合、またはステロイド内服量を減量しなければならない場合などでは静注用免疫グロブリン製剤の投与や免疫抑制剤の内服投与、血漿交換療法などの併用療法が行われます。

天疱瘡のイラスト

(詳細は、「自己免疫疾患」参照)

<木沢記念病院院長代行・理事 北島 康雄先生 監修>

⑥ チャーグ・ストラウス症候群〔Churg-Strauss Syndrome:CSS〕

チャーグ・ストラウス症候群(CSS)は血管の炎症がきっかけとなって起こります。炎症によって体の中のいろいろな臓器の血管がつまったり、また血管が破れて出血するために、種々の病状を示します。全身症状としては発熱、体重減少などが現れます。また神経障害による痛みやしびれ、手足の麻痺のほか、脳卒中、心筋梗塞が生じることがあります。

CSSの原因は良く分かっていません。何らかの抗原刺激を受けて体の免疫系が過剰に反応しているためと考えられています。日本国内には、約450名のCSSの患者さんがいると推定されています。CSSは、難治性疾患(難病)に指定されています。

CSSの治療は、①血管の炎症を抑えるためステロイド薬を使用します。②ステロイド薬で改善しない場合、または血管炎による大きな梗塞や出血の場合、免疫抑制薬を用いることがあります。③ステロイド薬を使用しても改善しなかった神経障害からの痛みや運動障害には、免疫グロブリン製剤を用います。1日当たり400mg/kg(体重)を5日間、連続して点滴静脈注射します。

CSSは、免疫グロブリン製剤の8番目の適応疾患として、2010年1月厚生労働省から承認されました。

CSS発病の経過

<杏林大学第一内科教授 有村 義宏先生 監修>

⑦ 多発性筋炎・皮膚筋炎〔PM/DM:Polymyositis/Dermatomyositis〕

多発性筋炎・皮膚筋炎は、筋肉に炎症が起こり、主として体や腕・大腿など体に近い筋肉の筋力が低下する疾患です。多発性筋炎ではなく多発筋炎と呼ぶ先生もいますが、同じものです。

全身症状としては、「からだがだるい、疲れやすい」などの症状がゆっくりとあらわれます。筋肉の症状としては、「高いところに物を持ち上げられない」「階段の昇降が不自由」「トイレでしゃがむと立ち上がるのがたいへん」「ものが飲み込みにくい」「話しづらい」などが出始めます。熱や関節痛などを伴うこともよくあります。

皮膚筋炎では、皮疹が顔や手を中心にあらわれます。紅色の発疹で、しばしばむくみを伴います。かゆみがないのが特徴的という記載もありますが、実際は多くの方がかゆみを訴えます。顔の皮疹は、まぶたや鼻唇溝などに多く、手は、指の関節の外側、爪の生え際などに現れます。その他、前胸部、肘、膝関節の外側にもあらわれることがあります。物とこすれるところ、陽に当たるところに多いようです。

病気の原因は免疫力が強すぎて自らの筋肉を攻撃することです。患者数は臨床個人調査票を用いた解析では18,000人程度で、毎年1,000人程度の方が発病し、2/3は皮膚筋炎と考えられています。男女比は、1:3程度で女性に多い傾向があります。一部の患者さんに認められる合併症として、見逃してはならないのが間質性肺炎と癌などの悪性腫瘍です。

多発性筋炎・皮膚筋炎の治療は、副腎皮質ステロイド薬が中心です。副腎皮質ステロイド薬を用いても改善しない場合や副作用で継続困難な場合には、免疫抑制薬を併用します。これら治療で十分な効果が認められない場合は、静注用免疫グロブリン製剤が使用されます。1日当たり400mg/kg(体重)を5日間連続で点滴静脈注射することが保険認可されています。静注用免疫グロブリン製剤投与後に、症状の再発や悪化などがみられた場合には、副腎皮質ステロイド薬の増量や免疫抑制薬変更を考慮しつつ、初回投与から4週たてば静注用免疫グロブリン製剤を再投与することも可能です。

鼻唇溝:「鼻から左右の唇の端にかけての深い溝」です。法令線(ほうれいせん)と呼ばれることもあります。

<東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科准教授 上阪 等先生 監修>

⑧ 重症筋無力症〔MG:Myasthenia Gravis〕

重症筋無力症は、神経と筋肉が接する場所(神経筋接合部といいます)を標的とした自己抗体により発症する自己免疫疾患です。この病気は、運動を継続すると早く疲れ、休息により筋力が回復します。症状は、朝軽く夕方や夜に強くなり(日内変動)、また日によっても症状が変動(日差変動)する特徴があります。症状は、まぶたが下がる(眼瞼下垂)、ものが二重に見える(複視)などの眼の症状が最初にあらわれることが多く、眼の症状のみにとどまる眼筋型と手足や飲み込む力などの全身の筋力も低下する全身型があります。全身型の場合、クリーゼ(呼吸筋麻痺をともなう呼吸困難な状態)に注意が必要です。

重症筋無力症の診断のためには自覚症状や臨床所見の他に、エドロフォニウムテスト、誘発筋電図、自己抗体の有無をみる血液検査を行います。重症筋無力症には胸腺異常(胸腺肥大や胸腺腫)を伴うことが多く、胸腺の画像検査も行います。

治療方針を立てる際には、発症年齢、眼筋型か全身型か、重症度、胸腺異常があるかどうか、自己抗体の種類などを総合的に判断します。治療は、症状軽減目的に抗コリンエステラーゼ薬を用い、長期的治療としてステロイド薬や免疫抑制薬、必要な時期に胸腺(腫)摘除を組み合わせます。これらの治療で十分な効果が得られない場合や、症状の増悪をきたした場合には一時的な改善を期待し、血液浄化療法や免疫グロブリン療法を考慮します。

<独立行政法人国立病院機構 宇多野病院 小西 哲郎先生 監修>

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