血液製剤について

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先天性アンチトロンビン欠乏症

アンチトロンビンは、トロンビンなどの活性型凝固因子と結合して複合体を作り、これらを中和して凝固の行き過ぎにブレーキをかけます。そのため、このアンチトロンビンが欠乏すると血液凝固の進行に歯止めがかからず、血栓症を起こしやすくなります。

この欠乏症は、大きく分けて2種類あります。一つは、アンチトロンビンの量が低下し(正常の約50%)、それに伴い、凝固制御活性値も正常の約50%に低下するⅠ型(古典型)です。もう一つの型は、アンチトロンビン量は正常ですが、活性が低下する(だいたい20%~70%)Ⅱ型があります。Ⅱ型は、アンチトロンビン遺伝子のある特定の個所に変異が生じることで正常な働きができないアンチトロンビンが生じるために起こります。いずれの型も血栓症の発症リスクを持ちますが、必ずしも血栓症が発生するとは限らず、生涯にわたり血栓症を発生しない場合もあります(全体の約35%)。血栓症を発症する人(全体の約65%)も、だいたい15歳以上になってから、男性では手術・外傷、女性では妊娠などがきっかけとなって血栓症を発症する場合が多いです。

【先天性アンチトロンビン】

先天性アンチトロンビン欠乏症は遺伝性疾患で、500~5000人に1人位の頻度で現れるといわれています。先天性アンチトロンビン欠乏症で起こる血栓症としては、動脈より静脈の血栓症が多く、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症、上腸管膜静脈血栓症、門脈血栓症等があります。アンチトロンビン欠乏症は、多くの例で、まず深部静脈血栓症として繰り返し起こり、そこでできた血栓がはがれて血流に運ばれ、肺の血管で詰まり、肺血栓塞栓症となることがあります。これは突然死の原因となります。

深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症が50歳以下で発症したり、複数の血管で血栓症が発症したり、再発を繰り返す場合、また同様な血栓症が1家系内で多発するような場合にアンチトロンビン欠乏症が疑われます。

アンチトロンビン欠乏症患者に血栓症が発生した場合、通常まずヘパリンやワルファリンといった抗凝固薬で治療されます。しかし、ヘパリンの抗凝固作用は、血液中のアンチトロンビンにより著しく高められることから、血栓症発症の急性期や妊娠、手術というような血栓症発生リスクがある場合には、アンチトロンビンⅢ製剤の投与が行われます。

<新潟県立加茂病院名誉院長 高橋 芳右先生(2009年11月監修)>

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