血液製剤について

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

関連疾患

凝固因子欠乏症

血友病A

1)血友病A患者の症状

血友病A患者さんの多くは、幼少時から出血症状を示します。出血部位は、頭蓋内、関節内、筋肉内など、からだの深部で出血が多く発生します。年齢によって出血を起こしやすい部位があります。乳幼児では、上記のほか、皮下出血、外傷による出血が多く発生する傾向にあります。

血友病A患者さんの出血症状は、重症度により、まちまちです。重症度は、正常な人の血漿中の第Ⅷ因子を100%(1.0単位/mL)として、1%未満の場合「重症」、1~5%の場合「中等症」、5%を超える場合「軽症」と分けられています。

中等症や軽症の血友病A患者さんでは、生後に初めて出血する年齢が高い傾向があります。また自然出血が起こる可能性が低くなります。

血友病に特徴的な出血は、関節内出血です。幼児期以降に多く起こります。膝、足、肘の関節に多く発生します。同じ関節内に出血を繰り返すことで、滑膜に炎症を起こし、関節構造が破壊されます。このため関節を動かすことが制限されて、「血友病性関節症」になります。血友病性関節症、出血しやすい部位

2)血友病A患者の止血療法

血友病Aの患者さんの出血を止める(止血)ための治療と、出血を起こさないようにするための予防的な治療が行われています。いずれの治療においても、血友病A治療薬(第Ⅷ因子製剤)を投与することになります。血友病A治療薬の投与のほかに、急性出血では出血部位の安静なども重要になります。

【血友病Aの止血療法】

血友病Aの止血法

(1)オンデマンド療法

オンデマンド(on-demand)とは、「必要に応じて」を意味しています。オンデマンド療法は、出血している血友病A患者さんに、その場で欠乏している第Ⅷ因子製剤を投与して、止血効果を期待するものです。また、手術前および手術後の出血を抑えるため、第Ⅷ因子製剤を投与します。

(2)定期補充療法

同じ関節に出血を繰り返すと、関節を動かせる範囲が狭まるなどの障害が起こります。その結果として、QOL(生活の質)が著しく低下します。第Ⅷ因子製剤を週に数回定期的に投与して、血中の第Ⅷ因子量を一定レベル以上に維持し、出血や炎症を防ぎ、関節障害の発生を抑える治療法のことで、関節障害のない時点の乳幼児期から開始する一次定期補充療法と関節障害発症後に開始する二次定期補充療法の二つがあります。

(3)在宅療法(自己注射)

出血のたびに通院して第Ⅷ因子製剤の投与を受けるのは、学業や仕事に影響を与えます。こうした影響を軽減する目的で、1983年に患者さん自身あるいは家族の方が、家庭で第Ⅷ因子製剤を投与することが公的に認められました。医療機関で説明を受け、トレーニングを受ける必要があります。【注射に必要なものの例】①製剤と溶解液②駆血帯③注射筒④フィルター針⑤溶解移注針⑥翼状針⑦時計(秒針つき)⑧針捨て容器⑨ビニール袋⑩消毒用アルコール綿⑪絆創膏※製剤によって用意するものが異なる場合があります。

(4)酢酸デスモプレシン(DDAVP)による治療

血友病A中等症あるいは軽症の患者さんにおける軽度から中等度の出血にはデスモプレシンの投与が第一選択となります。また、抜歯などの小手術の直前に投与します。デスモプレシンを投与すると、貯蔵部位に蓄えられている第Ⅷ因子が血中に放出され、血中第Ⅷ因子濃度が上昇し、止血します。投与を繰り返すと、第Ⅷ因子が枯渇し、無効になることがあります。重度の出血や大手術には適応となりません。また、水中毒や血圧上昇には十分注意が必要です。

<新潟県立加茂病院名誉院長 高橋 芳右先生(2009年2月監修)>

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