血漿分画製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血漿分画製剤のいろいろ

免疫グロブリン製剤

免疫グロブリン製剤の分類

免疫グロブリン製剤は大きく分けて、様々な抗体を幅広く有する 1)「免疫グロブリン製剤」と、特定の病原体に対する抗体を多く含む血漿から造られる 2)「特殊免疫(高度免疫)グロブリン製剤」に分けられます。さらに、1)「免疫グロブリン製剤」は、(1)「筋注〔きんちゅう〕用免疫グロブリン製剤」、(2)「静注〔じょうちゅう〕用免疫グロブリン製剤」、および(3)「皮下注〔ひかちゅう〕用免疫グロブリン製剤」に分類されます。

1)免疫グロブリン製剤

(1)筋注用免疫グロブリン製剤

本製剤は、アルブミンとともに分画製剤の中では最も古くからある製剤です。エタノール分画で取り出した免疫グロブリン(IgG)をほとんどそのまま使い製剤化します。筋注用免疫グロブリン製剤は、筋肉注射による局所の疼痛があり、大量投与できない、速効性に欠けるなど種々の制約があります。このため、現在では麻疹(はしか)やA型肝炎などに限って使用されています。

(2)静注用免疫グロブリン製剤(IVIG=Intravenous Immunoglobulin)

静注用免疫グロブリン製剤は、現在、最も多く使用されている免疫グロブリン製剤です。筋注用製剤による副作用の原因である凝集体をなくす、または凝集体による補体というタンパクの異常活性化を抑えるなどの様々な処理により、静脈注射を可能にした製剤です。どの静注用製剤も、無または低ガンマグロブリン血症重症感染症に使用できますが、一部の製剤は特発性血小板減少性紫斑病(ITP)川崎病慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)ギラン・バレー症候群(GBS)天疱瘡好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)、重症筋無力症(MG)の疾患に、使用が認められています。

(詳細は、「免疫グロブリン製剤の適応」参照)

(3)皮下注用免疫グロブリン製剤(SCIG=Subcutaneous Immunoglobulin)

皮下注用免疫グロブリン製剤は、無または低ガンマグロブリン血症の患者を対象とし、静注用免疫グロブリン製剤に加えた新しい投与法となります。皮下注用免疫グロブリン製剤は、皮下を通して徐々に成分が吸収されるため、安定した血中グロブリン値を維持することができ、急激な血中タンパク濃度の上昇に起因する全身性の副作用が少なくなると言われています。また、シリンジポンプ等の注入器具を用いることで、在宅自己投与ができます。

2)特殊免疫(高度免疫)グロブリン製剤

ある特定の抗体を多く含む免疫グロブリン製剤です。抗HBs人免疫グロブリン製剤(B型肝炎発症予防や母子感染の予防)、抗破傷風人免疫グロブリン製剤(破傷風の発症予防や治療)、抗D人免疫グロブリン製剤(Rh血液型不適合妊娠による新生児溶血性黄疸の予防)の3種類の製剤が医療で使用されています。

(詳細は、「免疫グロブリン製剤の適応」参照)

国内で使用されている免疫グロブリン製剤の種類

<大阪府立成人病センター顧問 正岡 徹先生(2015年4月監修)>

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