血液製剤について

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多発性筋炎・皮膚筋炎[PM/DM:Polymyositis/Dermatomyositis]

1)多発性筋炎・皮膚筋炎とは

多発性筋炎・皮膚筋炎は、筋肉に炎症が起き、主として体や体の中心に近い筋肉(大腿、上腕など)の筋力が低下する疾患です。多発性筋炎ではなく多発筋炎と呼ぶ先生もいますが、同じものです。

2)症状

全身症状としては、「からだがだるい、疲れやすい」などの症状がゆっくりとあらわれます。筋肉の症状としては、「高いところに物を持ち上げられない」「階段の昇降が不自由」「トイレでしゃがむと立ち上がるのがたいへん」「ものが飲み込みにくい」「話しづらい」などが出始めます。熱や関節痛などを伴うこともよくあります。

皮膚筋炎では、皮疹が顔や手を中心にあらわれます。薄紫がかった紅色の発疹で、しばしばむくみを伴います。かゆみがないのが特徴的という記載もありますが、実際は多くの方がかゆみを訴えます。顔の皮疹は、まぶたや鼻唇溝などに多く、手は、指の関節の外側、爪の生え際などに現れます。その他、前胸部、肘、膝関節の外側にも現れることがあります。物とこすれるところ、陽に当たるところに多いようです。

発病のきっかけは、免疫力のコントロールがしにくいという生来の体質(遺伝因子)に、感染症、ストレス、薬物、外傷、手術、妊娠・出産などの免疫反応が活発になるような事柄(環境因子)が重なることだろうと想像されています。その結果、強い免疫力が自分の筋肉や皮膚を攻撃して発症します。

多発性筋炎・皮膚筋炎の患者数は、臨床個人調査票を用いた解析で、18,000人程度です。現在、毎年1,000人程度の方が発病し、うち2/3は皮膚筋炎と考えられます。男女比は、1:3程度であり、発病年齢は皮膚筋炎で5~9歳に小さなピークがあり、多発性筋炎・皮膚筋炎で55~59歳に大きなピークがあります。したがって、小児では、皮膚筋炎が殆どです。なお、小児例は、皮膚症状が強く、石灰化を起こしやすいなどの特徴があります。

一部の患者さんに認められる合併症として、見逃してはならないのが間質性肺炎と癌などの悪性腫瘍です。間質性肺炎は、ふつうの肺炎と異なり、咳がでても痰がでません。しばしば、運動時に息苦しくなり、ひどくなると安静時でも息苦しさを感じます。急速に進む場合は、命にかかわることがあり、特に、筋症状が弱く、皮膚症状が強い患者さんに多い傾向があります。このような場合には、早期に専門医の受診が必要です。

悪性腫瘍は、高齢の方の皮膚筋炎では特に多く、発症時に癌を探すことが重要です。癌を良くしないと筋症状や皮膚症状はなかなか良くなりません。また、発症後も2年間くらいは要注意ですので積極的に癌検診をする必要があります。

その他の症状として、心臓にまで症状が及ぶと、不整脈や心不全がおこります。

 鼻唇溝:「鼻から左右の唇の端にかけての深い溝」で、法令線(ほうれいせん)と呼ばれることもあります。

3)診断

上記の症状に加えて、いろいろな検査をして診断します。

(1)血液検査

炎症で筋肉が損傷すると、血液中のCK(クレアチニン・キナーゼ)アルドラーゼミオグロビンなどの値が上昇します。筋炎の程度の指標にもなります。

自らの組織である筋肉を免疫力が損傷していることを反映するように、自らの細胞構成成分に対する抗体(自己抗体)が現れます。抗Jo-1抗体が代表的です。診断に役立ちますが、筋炎の程度とは必ずしも相関しません。

(2)針筋電図検査

筋肉に電極のついた針を刺して、筋力低下の原因を探ります。

(3)核磁気共鳴検査

筋炎の存在と拡がりを把握する検査です。

(4)筋生検

(2)や(3)の検査で、筋炎がありそうな部位の筋組織を少量取って、顕微鏡で検査します。筋炎の様子がよくわかり、他の病気との区別に役立ちます。

CK(クレアチニン・キナーゼ):骨格筋や心筋などの筋肉組織が障害を受けた場合に血中への逸脱が起こり上昇します。

アルドラーゼ:全身の臓器に広く存在し,特に骨格筋や心筋に多く含まれ、組織崩壊に伴い血清中に流出します。

ミオグロビン:筋肉細胞に多く含まれており、筋肉が障害を受けると血中濃度が上昇します。

抗Jo-1抗体:多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)の患者血清中に発見されたPM/DMに特異的な自己抗体。

4)治療

①副腎皮質ステロイド薬の服用や点滴静注が中心です。プレドニゾロン換算で体重1kg当たり1mgの量です。多くの場合、改善しますが、副腎皮質ステロイド薬は、筋肉萎縮を含むさまざまな副作用があります。

②副腎皮質ステロイド薬でも改善しない場合や副腎皮質ステロイド薬の副作用で継続が困難な場合、免疫抑制剤を併用します。現在、保険適用になっているのは、アザチオプリンとシクロホスファミドですが、メトトレキサートやタクロリムス、シクロスポリンAも有効です。急速に進む間質性肺炎では、初めから免疫抑制剤を併用します。

③上記で十分な効果が認められない場合は、静注用免疫グロブリン製剤が使用されます。筋力低下に対して、体重1kg当たり400mgを5日間連続で点滴静脈注射することが保険認可されています。投与後に症状の再燃や悪化などが認められた場合には、副腎皮質ステロイド薬増量や免疫抑制剤変更を考慮しつつ、初回投与から4週たてば再投与することも可能です。

<東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科准教授 上阪 等先生(2012年2月監修)>

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