血漿分画製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血漿分画製剤のいろいろ

組織接着剤

組織接着剤の開発の経緯

外科手術では、組織を接着するために縫合(ほうごう)が行われますが、糸は絹糸や合成糸であるナイロン糸などが使用されます。縫合することで組織に針穴などの傷を生じたり、縫合に時間がかかるという問題点もあります。これらの解決のために、1910年頃から縫合部の接着を強化するためにフィブリンを使う研究が始まりました。

現在の組織接着剤の原型は1944年、クロンカイツらが皮膚移植の際にフィブリノゲンとトロンビンの2成分を用いたのが最初です。接着力が弱いことや適用後フィブリンがすぐに分解されたため効果が不十分で、臨床応用されませんでした。

1970年に入り、精製技術が進み、高濃度のフィブリノゲンやトロンビンの溶液が作成できるようになりました。この両者が反応してできるフィブリンの網目を強固にする血液凝固第ⅩⅢ(じゅうさん)因子も発見されました。また形成されたフィブリン膜は生体内のプラスミンという酵素(こうそ)で分解されますが、プラスミンの作用を阻害(そがい)してフィブリン膜が分解されるのを防ぐアプロチニンという成分も利用できるようになりました。このように、開発の技術基盤が整ってきて1970年代後期には現在の液状組織接着剤がキット化製品として利用できるようになりました。日本では1988年に液状組織接着剤が発売されました。

その後、シート状組織接着剤がドイツで開発され、日本では1999年に発売されました。液状組織接着剤もシート状組織接着剤も組織の接着や閉鎖に使用され、医療現場では手術部位の形状等に応じて使い分けがなされています。

<慶應義塾大学医学部名誉教授 小林 紘一先生(2011年7月監修)>

ページトップ