血漿分画製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血漿分画製剤のいろいろ

その他の製剤

ハプトグロビン製剤

1.ハプトグロビン製剤について

ハプトグロビンは、主として肝臓で作られる血漿タンパクで、ヘモグロビンと特異的に結合してハプトグロビン・ヘモグロビン複合体を形成する特性を有しています。その名称はヘモグロビンのグロビン(globin)に親和性を有するハプテン(hapten)に由来しています。

ハプトグロビンは、溶血(赤血球がこわれること)によって、血液中にヘモグロビンが遊離されると迅速かつ強固に結合して、正常な代謝経路である肝臓に運び処理する働きを担っています。

通常、ハプトグロビンが血液中に十分ある場合や軽度な溶血の場合には、遊離ヘモグロビンは血液中のハプトグロビンによりスムーズに処理されますので、血液中には遊離ヘモグロビンは検出されません。

ところが、熱傷や異型輸血などに伴う高度の溶血によってヘモグロビンが大量に放出されると、血液中のハプトグロビンがヘモグロビン代謝のために消費されて消失してしまいます。そうすると、処理しきれない過剰の遊離ヘモグロビンが血液中に残ることになります。

血液中の遊離ヘモグロビンは容易に腎臓の糸球体を通過します。糸球体を通過したヘモグロビンは尿細管上皮細胞に取り込まれてヘムとグロビンに分解されるのですが、このうちヘムは尿細管上皮細胞に対して毒性を示し、尿細管の機能障害(腎障害)を引き起こすといわれています。

そこで、血液から精製したハプトグロビン製剤を投与し、血液中のハプトグロビンを補充することにより、過剰の遊離ヘモグロビンを肝臓に運び処理すれば、溶血に伴う腎障害を抑制することができます。

 ハプテン:低分子で単独では抗原にはならないが、適当なタンパク質に結合することで抗原となることができる物質

 異型輸血:異なる血液型の血液を輸血すること

図1−ハプトグロビン製剤

図2−ハプトグロビン製剤

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2.ハプトグロビン製剤の適応について

(1)ヘモグロビン血症

熱傷、異型輸血や大量輸血、体外循環下開心術などで高度の溶血が起こると、血液中のハプトグロビンで処理しきれない過剰の遊離ヘモグロビンが血液中に残ります。この病態がヘモグロビン血症です。

(2)ヘモグロビン尿症

ヘモグロビン血症では、遊離ヘモグロビンは腎臓の糸球体を通過し尿中に排泄されます。糸球体を通過した遊離ヘモグロビンは尿細管で再吸収されるのですが、再吸収能を超えるとヘモグロビン尿症となります。ヘモグロビン尿症における尿色調は、通常の血尿(鮮紅色)とは異なりコーラ色ですが、ハプトグロビン製剤投与により数分で無色に近い色調となります。

ハプトグロビン製剤は、遊離ヘモグロビンと複合体を形成して、正常な代謝経路である肝臓に運び処理することで、ヘモグロビン血症、ヘモグロビン尿症の病態を速やかに改善し、溶血に伴う腎障害を抑制します。

 体外循環下開心術:人工心肺装置を用いて行う手術

3.ハプトグロビン製剤の安全性

(1)ハプトグロビン製剤のウイルス安全対策について

1)採血時の問診・診察

2)原料血漿の感染症に関する検査

3)原料血漿の貯留保管

4)製造工程でのウイルス不活化・除去

加熱処理

ウイルス除去膜処理 (ナノフィルトレーション)

5)最終製品の検査

詳細は当協会HPの「血漿分画製剤の安全性」の項をご参照下さい。

(2)ハプトグロビン製剤の副作用について

重大な副作用としてはショック、アナフィラキシー様症状があります。その他の副作用としては、発疹、じんま疹、嘔吐 等の報告があります。

<千里救命救急センター名誉所長 太田 宗夫先生(2012年2月監修)>

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